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2009年度日本地震工学会・論文奨励賞の受賞者発表

 日本地震工学会は優れた研究により地震工学の分野で顕著な業績をあげた若手研究者を奨励するために「日本地震工学会・論文奨励賞」を 2005年度より設置しました。受賞対象者(毎年2名以 内)は、表彰年の前 年度の12月31日から2年前までの期間に日本地震工 学会論文集に掲載された論文の筆頭著者を原則として、受賞年度の 4月1日において満35歳以下の正会員あるいは学生会員です。

 2009年度論文奨励賞の受賞者は、該当する全ての受賞候補者の中から論文集編集員会による選考、および理事会による審議を経て、下記の2名と決定いたしました。心よりお祝いさせて頂きます。授賞式は本年5月20日に日本地震工学会の総会が建築会館で行われます際に実施されます。

1.受賞者:高浜 勉 君(轄\造計画研究所)

  • 受賞論文:地盤条件を考慮した地震による鉄道構造物の被害関数の構築(第9巻 第5号、2009年11月掲載)
  • 著者:高浜 勉,翠川三郎

受賞理由:
 本論文は、地盤条件を考慮した地震による鉄道構造物の被害関数の構築を試みたものである。具体的には、1978年宮城県沖地震、1995年兵庫県南部地震、2004年新潟県中越地震による鉄道構造物の被害資料を収集・整理し、被害発生地点を震度分布と重ね合わせ、計測震度とメッシュ単位での鉄道構造物の被害率との関係を地形・地盤分類ごとに整理している。さらに被害率の傾向が類似した地形・地盤分類を統合し、震度4〜7で適用可能な被害関数を構築している。その結果、鉄道構造物の被害は震度5強程度から生じ始めること、被害率は山地・丘陵や谷底低地などで高いことを確認しており、工学的に有用である。以上のことから、本論文は論文奨励賞に相応しいと判断した。

2.受賞者:飯塚裕暁 君(筑波大学大学院)

  • 受賞論文:木造建物における一自由度系地震応答解析のための復元力特性モデルの提案(第9巻 第1号、2009年2月掲載)
  • 著者:飯塚裕暁,境有紀

受賞理由:
 本論文は、木造建物の地震応答解析をより簡便に行うために、建物を一自由度系の単一ばねにモデル化する際の復元力特性モデルを提案したものである。具体的には、Takeda-Slipモデルに木造建物の挙動を表現できるよう修正を加えている。提案したモデルの妥当性を確認するため、地震応答解析を行って、既往の実大振動実験結果を再現できるかどうかを検証した結果、実験結果を概ね再現できることを確認している。さらに、建物を構成する耐力壁の仕様より復元力特性モデルのパラメタを決定する方法について検討し、耐力壁ごとの復元力特性を重ね合わせることで、提案するモデルのパラメタを設定し、地震応答解析を行って実大振動実験結果と解析結果との比較を行っている。解析結果は実験結果を概ね再現することができ、耐力壁の仕様がわかれば、提案するモデルのパラメタを設定して地震応答解析ができることになり、提案されたモデルは工学的に有用である。以上のことから、本論文は論文奨励賞に相応しいと判断した。

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