7th International Seminar on Seismic Isolation, Passive Energy Dissipation and Active Control of Vibrations of Structures参加報告

古屋 治(東京都立工業高等専門学校)

1.はじめに

 

平成13年10月2日から5日まで,イタリア中部ウン ヴリア州のスバジィオ山の斜面に広がるアッシジにて「7th International Seminar on Seismic Isolation, Passive Energy Dissipation and Active Control of Vibrations of Structures」が開催されました.アッシジは, 山の斜辺に城壁を築き,城壁内に聖フランチェスコ聖堂をはじめとしたフランチェス コ会の教会が点在する町並みとなっています。特に,12世紀に聖フランチェスコが生まれた町として有 名な城壁都市です.また,1999年の地震により,いくつかの聖フランチェスコ聖 堂を始めとした歴史的建造物で被害が生じたことでもご存じの方々がいらっしゃるか と思います.開催時期は,10月初旬でしたが,予想よりも暑く,ほとんど毎日を半 袖で過ごす気候でした.

写真1 アッシジの町を背景に日本振動技術協会のセミ ナーツアー参加者

 

2.会議の概要

 

本会議は,原子力発電施設の構造物、機器及び材料の信 頼性、耐震性、破壊機構等構造力学を中心として隔年毎に開催されている国際会議 SMiRTInternational Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology)のPost Conferenceとして開催されているもので,前回は, 1999年韓国済州島で行われました.ただし,今回は,「Joints, Bearings and Seismic Systems for concrete StructuresRome, October 7-11,2001会議」の Pre Conferenceとして開催された点が従来と異なりま す.本会議は,名称からもわかるように,免震,制振,耐震といった振動制御/耐震 技術に関する内容に焦点を合わせた会議内容となっています。各セッションでの講演 は,各国の当該分野に関する指導的な研究者・技術者から,その国での振動制御/耐 震技術に関する研究開発の現状ならびに動向について報告される形式を取っていま す.また,オーラルセッションの講演者以外の参加者は,平行して行われるポスター セッションにて,情報あるいは意見交換を行う会議形式となっています.

2001年9月11日のニューヨーク同時多発テロの関 係で非常に混乱した社会情勢にもかかわらず,25カ国から237名の参加者があり ました.参加国と各国参加者数は,Armenia(1), Austria(5)Belgium(3)Chile(2)China(4), Czech Republic(1)EC(5), France(4)Germany(6)Greece(7)IAEA(1), India(1)Italy(130)Japan(28)Korea(6)Kyrgystan(1)Mexico(2)New Zealand&Peru(1), Romania(1)Russia(3)Spain(1)Switzerland(2)Taiwan(2)Turkey(5)United Kingdom(2)USA(13)の通り.なお,日本人参加者28名のう ち14名は,日本振動技術協会(会長 東大生研 藤田隆史教授)として参加しまし た.

 

3.会議の内容

 

会場は, Oralセッション(写真2),前回から設けられた Posterセッショ ン,Exhibition(写真3)という大きく三つの会場より構成されました。講演会場が一つというこ ともあり,講演室の移動やパラレルセッション形式時に良くある他のセッションの講 演を気にすることなく落ち着いて会議に参加できることもこの会議のよいところで す。Oralセッショ ンでは,上述のように各国の当該分野に関する指導的な研究者・技術者より,その国 での振動制御/耐震技術に関する研究開発の現状ならびに動向が報告され,講演最後 に参加者との活発なディスカッションが行われます。会議期間中は,製本された Proceedingsはな く,隣室のPoster セッション会場に積み上がっている各セッション毎 の講演論文コピーを集め会議に参加します。

写真2 Oralセッション会場

写真3 Exhibition会場

会議のプログラムを以下にまとめます.

◆10月2日

welcome addresses and introduction to the seminar and international exhibition

 

the seismic protection of structures: main requirements and benefits of using the innovative anti-seismic techniques

 

welcome cocktail offered by the organizers

 

◆10月3日

remarks on the definition of seismic input, architectural design and financial aspects

 

state-of-the-art on application, r&d and design rules for seismic isolation and passive energy dissipation for civil and industrial structures (i) (ii) (iii) (iv)

 

dinner with music at the grand hotel assisi (at the costs of participants)

 

◆10月4日

state-of-the-art on application and r&d for active, semi-active and hybrid vibration control techniques

 

large ongoing r&d projects on the innovative techniques for the control of seismic and non-seismic vibrations (i) (ii)

 

remarkable design examples concerning recent application of the innovative anti-seismic techniques to new and existing bridges and viaducts, with remarks on the used regulations and costs

 

characteristic dinner offered by the organizers

 

◆10月5日

remarkable design examples concerning recent application of the innovative anti-seismic techniques to new and existing strategic, public and regular apartment buindings, with remarks on the used regulations and costs

 

recent application and ongoing studies concerning the use of innovative techniques for the seismic protection of cultural heritage

 

ongoing and planned new application of the innovative anti-seismic techniques to the nuclear plants, with remarks on the used regulations

 

remarkable design examples concerning recent application of the innovative anti-seismic techniques to new and existing non-nuclear plants, in particular high risk chemical plants, with remarks on the used regulations

 

closing panel on technology transfer and future directions

 

closing remarks and proposals / decisions for the next seminar

 

seminar closure

 

プログラムからわかるように,制振・免震・耐震といっ た分野に関わる研究者や技術者にとっては,非常に充実した内容となっています。今 回の会議は,主催国であるイタリアのGLIS, ENEA & University of FerraraA. Martelli先生を中心として行われましたが,最終日 には,次の先生方によるクロージングパネルが行われ今後の研究の方向性や会議の在 り方など様々な観点で積極的な議論が行われました.パネリストは,A. Martelli (Italy) L. Serva (Italy)S. Anagnostopoulos (Greece)K.-C. Chang (Taiwan) J.M. Eisenberg (Russian Federation) S. Ruiz (Mexico)T. Fujita (Japan) J.M. Kelly (USA) H.M. Koh (Korea) H.S. Kushwaha (India) M. Melkumyan (Armenia)S. Okten (Turkey)M. Sarrazin (Chile)F.L. Zhou (P.R. China)

なお,筆者個人が注目したのは,イタリアにおける歴史 的建造物の耐震補強/補修に関する発表でした。特に,歴史的建造物で大きな被害を 生じたアッシジでは,聖フランチェスコ聖堂の崩れ落ちた壁を補修し,さらに,壁と 梁を形状記憶合金を用いた振動制御装uで積極的に振動制御/耐震改修を行っており ました(写真4)。

また,聖フランチェスコ教会会議場では,当教会で最も 古い13世紀のステンドグラスを免震展示ケース((株)エーエス寄贈)に展示して おり,今回,幸運にも見学することができました(写真5).

 

4.おわりに

 

近年開催されている制振・免震・耐震関係の国際会議の 中では,最も充実した内容の会議に位置付けられるInternational Seminar on Seismic Isolation, Passive Energy Dissipation and Active Control of Vibrations of Structuresの報告 をしました。本会議は、振動制御や耐震技術に精通した多くの研究者・技術者が参加 する会議であり、近年の研究動向を知り,また,広く情報や技術あるいは経験を交換 しあえる良い機会になっています。

次回は,2年後の2003年は,アルメニアにおいて行 われる予定です.また,2005年には,日本での開催が予定されています。ご興味 のある方々は,是非ご参加を検討してみてはいかがでしょうか。

筆者後記

参加報告をまとめさせていただきました。会議内容とは 直接関係ありませんが,なにしろ食事は長い,昼食(写真6)の1時間半以上に始ま り,会議が主催した夕食会など,20時30分から会場にバスで移動を開始し,食事 をし,ホテルについたのが13時をとっくにすぎた時間でした。前の晩に催された夕 食会も20時に始まり,終了が12時30分過ぎ...。よく食べ,よく飲み,そし て,よくしゃべる。非常にお国柄を象徴していたのではないかと思います。

 

写真4 耐震改修例(サン・フランチェスコ聖堂)

写真左端(教会後方)の三角形状の壁面上部が崩れ落 ち,当該壁を形状記憶合金ダンパにより梁と接続し,スマート構造を応用した耐震補 修を実施

 

 

 写真5 聖フランチェスコ教会会議場にある免震展示 ケース

((株)エーエス寄贈)

 

 

 写真6 昼食のようす