ホーム日本地震工学会

書庫 > 日本地震工学会論文集 第9巻第2号

特集号「情報共有による減災対策」の発刊にあたって

 1995年阪神・淡路大震災の際、初動期における被災情報の把握や国・自治体・住民など関連機関の持つ情報を速やかに共有することができず、効果的な減災対策を行う上で大きな課題となりました。このため震災後、国や多くの自治体で強震観測・震度計ネットワークや緊急地震速報、早期被害推定・応急対応支援システムなどが整備され、異なる機関での情報共有システムの構築や実践的な図上演習・防災訓練の実施など、情報共有による減災対策の様々な試みが行われています。中央防災会議では平成14年に防災情報の共有化に関する専門調査会を設置し、平成15年3月に防災情報システム整備の基本方針を決定しました。災害時の時間的・空間的な空白を埋め、有効な防災対策を行うために情報の共有化が不可欠であり、各防災関係機関の情報システムを連携させる防災情報共有プラットフォームの構築が提言されています。このため災害対応の中心である地方自治体を対象とした災害時の情報の共有化を実現させる研究として、平成16年7月より文部科学省科学技術振興調整費・重要課題解決型研究の3ヵ年の研究プロジェクトとして「危機管理情報共有技術による減災対策」が行なわれました。このような背景から、日本地震工学会では2007年度大会にてオーガナイズド・セッション「情報共有による減災対策」が企画され、上記プロジェクトで得られた研究成果をはじめ、関連する各分野から多くの成果発表と活発な討議が行われました。

 本特集号では上記のセッションで発表された論文に加え、情報共有による減災対策に関連する研究成果を広く公募し、その結果、合計16編の論文・報告が掲載されています。扱われている内容も緊急地震速報の改善法の提案や利活用、効率的な情報収集と共有に関する情報システムの開発や、自治体や地域住民との協働による大規模な防災訓練など減災活動への利活用など、多岐にわたります。震災時において関連機関で情報が共有され、実際に減災に役立つには、地震学や地震工学、情報学・社会学など幅広い分野の研究者・実務者の連携と防災担当者・住民との協働関係が不可欠になります。関連機関や関係者間の連携はまだ十分とは言えないのが現状だと思いますが、本特集号が今後のさらなる発展のための契機となることを期待しています。

 最後に本特集号を実現できたのは、論文・報告の執筆者のご賛同とご協力、および多くの査読者の方々のご尽力の賜物です。関係者各位、特に吉田郁政 委員長、栗田 哲・伊津野和行 副委員長に改めてお礼申し上げます。


特集号「情報共有による減災対策」編集委員会
2009年2月9日
久田嘉章(委員長)、村上正浩、目黒公郎、鈴木猛康、座間信作

このページの上部へ