2004年のスマトラ沖地震津波以降,日本地震工学会では津波災害の軽減方策に関する研究が継続的に実施されている.特に2011年東日本大震災以降は,構造物に作用する津波荷重の評価に関する議論が体系的に重ねられ,直近の「津波荷重評価の体系化の心得を取り纏める研究委員会」(2019年4月~2022年3月)や,その後継委員会(2022年4月~2025年9月)を通じて,津波荷重評価技術の整理と技術集の公開が進められ,評価手法の共通的理解の促進が図られてきた.
このような背景のもと,本委員会は,構造物に作用する津波流体力の数値シミュレーション技術に着目し,既往研究のレビューと実務への実装可能性の整理を主目的として活動する.活動の具体的な対象として,OpenFOAM等の汎用CFDソフトウェアを用いた三次元モデルによる解析技術を重点的に取り上げ,計算条件,適用範囲,精度に関する水理実験との比較事例を調査・整理する.また,津波伝播域や簡易評価に用いられる二次元モデルとの使い分けや検証事例との比較,実被害との整合性についても検討し,現行技術の課題を明確化する.さらに,AI,機械学習,データ同化などの新技術との統合可能性や,実務設計への適用に向けた技術的・制度的観点からの論点整理も行う.
2025年10月1日~2027年9月30日
委員会活動の初期段階では,国内外の津波荷重評価に関する数値シミュレーション事例の文献調査を行い,特に三次元CFDモデルを用いた評価手法に関するレビューを重点的に実施する.並行して,解析条件や出力のばらつき,適用上の課題を整理し,技術的な留意点を明確化する.活動の中・後半では,二次元モデルとの比較や,既往の実験・観測データとの整合性確認を通じて,シミュレーション技術の実務適用に向けた課題を抽出・整理する.新技術との統合可能性についても検討を行う.
委員間の技術共有や議論を深めるため,年3回の委員会のほか,必要に応じて分科会を実施する.活動成果は,委員会終了後に報告会等を通じて広く共有する予定である.
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